SOMPOホールディングス

【SOMPOホールディングス】IR資料から読み解く投資ポイント

決算サマリー 2026.07.28
【SOMPOホールディングス】IR資料から読み解く投資ポイント

〜2025年度(2026年3月期)通期決算 修正連結利益5,352億円で過去最高益、13期連続増配へ〜

はじめに

今回の記事では、SOMPOホールディングス(証券コード8630)が公開している2025年度(2026年3月期)通期決算説明資料(2026年5月20日公表、IFRSベース)をもとに、同社の事業内容、業績動向、成長戦略、そして投資家が注目すべきポイントを整理します。2025年度は修正連結利益・連結当期利益ともに過去最高を更新し、株主還元も大きく前進した一方、2026年度は自然災害の平年回帰などにより見かけ上は減益予想となっています。この「実態」と「見かけ」の差をどう読むかが、今回の資料を理解するうえでの要点になります。

※本記事は公開IR資料をもとに作成したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

1. 会社概要

SOMPOホールディングスは、損害保険・生命保険・介護などを傘下に持つ保険持株会社です。IFRSベースの開示では、グループの利益を大きく2つのドライバーに区分しています。

  • SOMPO P&C:国内損保事業(中核は損保ジャパン)と海外保険事業(中核はSompo International=SIH)
  • SOMPO ウェルビーイング:国内生保事業(SOMPOひまわり生命)と介護事業(SOMPOケア)
  • このほか、その他(ダイレクト・デジタル等)が加わります。

収益の柱は「保険引受による利益」と「資産運用による利益」です。2025年度のグループ保険収益(IFRS)は5兆3,729億円(前年度比+3,074億円)に達しました。

グループ全体の稼ぐ力を示す修正連結利益(2025年度5,352億円)の内訳を見ると、海外保険事業(2,653億円)と国内損保事業(2,194億円)が二本柱となり、これに国内生保事業(613億円)、介護事業等(128億円)が加わる構造です。国内損保の安定した収益基盤に加え、海外スペシャルティ保険・再保険を担うSompo Internationalの拡大が、近年のグループ成長を牽引しています。

競争優位性としては、国内損保大手の一角である損保ジャパンの強固な販売網・引受基盤に加え、海外ではSompo Internationalによるスペシャルティ・再保険領域での存在感が挙げられます。2026年2月には米保険会社Aspenの買収を完了しており、海外保険事業の規模拡大とシナジー創出が新たな成長エンジンとして加わりました。

2. 今回のIR資料で最も重要なポイント

ポイント1:修正連結利益・連結当期利益がそろって過去最高益を更新

  • 何が起きているか:2025年度の修正連結利益は前年度比+2,118億円の5,352億円、連結当期利益は前年度比+3,969億円の6,400億円と、いずれも過去最高益を更新しました。年初予想対比でも修正連結利益は+1,722億円の上振れです。
  • なぜ重要か:国内損保のベース収支改善、国内外の自然災害の減少、海外保険の運用資産拡大など、全事業で利益が拡大したことが背景で、特定要因への一極集中ではありません。増益の中身が「収益性の構造的な改善」と「自然災害の少なさという一過性の追い風」の両方から成る点が、翌年度予想を読むうえでの鍵になります。
  • 投資家は何を見るべきか:過去最高益のうち、どの程度が構造的な改善で、どの程度が自然災害の少なさによる一時的なものかを切り分けて評価する視点が重要です。

ポイント2:損保ジャパンの収益性改善と海外保険の成長がグループを牽引

  • 何が起きているか:国内損保事業の修正利益は前年度比+959億円、海外保険事業は同+1,055億円の増益となりました。損保ジャパンのコンバインド・レシオ(E/I、自賠責・家計地震を除く)は前年度の98.9%から93.9%へと5.0ポイント改善しています。
  • なぜ重要か:火災保険・新種保険のベース収支改善や商品改定に伴う料率適正化が進み、自然災害要因を除いても収益性が着実に高まっていることを示しています。海外はSompo Internationalが規律あるアンダーライティングを継続し、保険収益も前年度比+11%(Aspenを除くと+9%)と力強く伸びました。
  • 投資家は何を見るべきか:料率改定効果の持続性と、自動車保険など損害率が高止まりする種目の改善余地です。

ポイント3:総還元額2,816億円、配当は13期連続増配へ

  • 何が起きているか:2025年度通期の総還元額は2,816億円(配当1,356億円、自己株式取得1,460億円)となりました。2026年度の1株当たり配当金は前年度比+33%の200円を予想し、13期連続の増配となる見込みです。あわせて690億円の自己株式取得も決定しています。
  • なぜ重要か:会社側は配当性向(3年平均修正連結利益ベース)を2025年度の34%から2026年度予想の39%、さらに中期的に50%へと高める方針を示しており、株主還元の拡充姿勢が明確です。
  • 投資家は何を見るべきか:EPS成長を上回る増配方針が続くか、成長投資と機動的な自己株式取得のバランスがどう取られるかです。
2025年度の株主還元と一株当たり配当額の推移を示すスライド。総還元額2,816億円、配当150円、自己株式取得の内訳、および2013年度以降13期連続増配(2026年度予想200円)と配当性向の目標を図示。
2025年度の総還元額は2,816億円(配当1,356億円、自己株式取得1,460億円)。1株当たり配当は2025年度150円から2026年度予想200円(前年度比+33%)へ引き上げ、13期連続増配となる見込みです。配当性向(3年平均修正連結利益ベース)は34%→39%、中期的に50%を目指す方針が示されています。

ポイント4:2026年度は「見かけの減益」だが平年値ベースでは過去最高

  • 何が起きているか:2026年度の修正連結利益(予想)は5,000億円で、2025年度実績(5,352億円)対比では△352億円ですが、自然災害を平年並みに引き戻した「平年値ベース」(4,375億円)対比では+624億円の増益であり、平年値ベースでは過去最高益となります。
  • なぜ重要か:2025年度実績には、国内外の自然災害・大口事故が少なかった一過性の押し上げ(約977億円)が含まれており、その剥落が2026年度予想の見かけ上の減益要因です。構造的な収益力はむしろ伸びている点が資料の主張です。
  • 投資家は何を見るべきか:減益予想を額面通り受け取らず、平年値ベースの利益トレンドで実力を評価することが求められます。

3. 業績動向

2025年度の連結業績(IFRS)は、保険収益5兆3,729億円(前年度比+3,074億円)、修正連結利益5,352億円(同+2,118億円)、連結当期利益6,400億円(同+3,969億円)と、増収・大幅増益となりました。修正連結ROEは前年度の9.2%から13.4%へと大きく改善しています。

修正連結利益をセグメント別(グループ寄与ベース)に見ると、以下のとおりです。

  • 国内損保事業:1,235億円 → 2,194億円(+959億円)。火災保険・新種保険のベース収支改善(+700億円)や自然災害影響の減少(+260億円)が寄与しました。
  • 海外保険事業:1,597億円 → 2,653億円(+1,055億円)。自然災害影響の減少(+580億円)、自然災害を除くベース収支の改善(+350億円)、運用資産額増加に伴う利配収入増などが押し上げました。
  • 国内生保事業:570億円 → 613億円(+42億円)。保険金等の支払下振れや債券入替による利配収入増が主因です。
  • 介護事業等:92億円 → 128億円(+36億円)。介護事業単体では修正利益が初めて100億円を超え109億円となりました。

連結当期利益(6,400億円)は、修正連結利益(5,352億円)に市況変動に伴う時価変動益や政策株式などの有価証券売却益等が加わって拡大しました。この差分の多くは金融市場由来の一時的な要因であり、2026年度予想の連結当期利益(4,900億円)が前年度比で減少するのは、こうした一過性益の剥落が主因です。

2026年度予想は、修正連結利益5,000億円、連結当期利益4,900億円、保険収益6兆4,100億円(Aspen連結により大幅増収)です。前述のとおり、修正連結利益は平年値ベースでは+624億円の増益であり、実力ベースの成長は続いています。

修正連結利益の増減要因を示すウォーターフォール図と3期分(2024年度・2025年度・2026年度予想)のセグメント別利益一覧表。国内損保、海外保険、国内生保、介護等、その他の内訳と対前年増減額を図示。
修正連結利益は2024年度3,234億円から2025年度5,352億円(過去最高益)へ拡大し、2026年度は5,000億円を予想。SOMPO P&C(国内損保・海外保険)とSOMPO ウェルビーイング(国内生保・介護)のセグメント別内訳と3期分の推移を一覧できます。国内損保+959億円、海外保険+1,055億円が増益を牽引しました。

セグメントごとの主なトピックは次のとおりです。

  • 国内損保(損保ジャパン):コンバインド・レシオ(E/I、自賠責・家計地震を除く)は93.9%(発生ベースでは91.0%)へ改善。ただし自動車保険のコンバインド・レシオは103.9%と依然100%を上回り、修理費単価の上昇(+5.6%)が重荷となっています。政策株式は2025年度に2,924億円を削減しました。
  • 海外保険(SIH):修正利益は+709百万ドルの1,737百万ドル。コンバインド・レシオ(割引影響含む)は前年度の90.6%から82.1%へ改善しました。運用資産額はAspen連結効果もあり331億ドルへ拡大しています。
  • 国内生保(ひまわり生命):保障性商品中心のポートフォリオにより契約消滅率は4.5%と業界平均(8.7%)を大きく下回り、CSM(契約サービスマージン)残高は6,531億円を確保しています。
  • 介護(SOMPOケア):売上高は1,863億円へ増収、入居率は2025年度末で93.3%と高水準を維持しています。

4. 成長戦略・中期的な注目点

会社側が重視する経営指標と、その進捗・目標は以下のとおりです。

  • 修正連結ROE:2025年度実績13.4%。中期的な目標は13〜15%で、2026年度計画は13.1%。事業別では国内損保14.6%、海外保険13.8%、介護14.4%と高水準に達する一方、国内生保は7.3%で目標(8%以上)を下回っており、収益性向上が課題です。
  • 修正EPS成長率:中期目標は年率+12%超。2026年度計画は年率+19%程度と、目標を上回る成長を計画しています。
  • 資本の健全性(ESR):2026年3月末のESRは270%(2025年3月末は256%)。ターゲット資本水準(200%以上)を上回る水準を維持しており、利益の積み上げや政策株式削減が押し上げ要因となりました。
経営数値目標の一覧表。修正EPS成長率、修正連結ROE(実績・計画・目標13〜15%)、国内損保・海外保険・国内生保・介護の事業別ROE、修正連結利益・連結当期利益・連結純資産などの実績値を年度別に図示。
修正連結ROEは2025年度13.4%で、中期目標は13〜15%。修正EPS成長率は目標年率+12%超に対し2026年度計画は+19%程度。事業別ROEは国内損保14.6%・海外保険13.8%・介護14.4%と高水準の一方、国内生保は7.3%で目標(8%以上)を下回っており、資本効率の全体像と課題を確認できます。

成長ドライバーとして、資料では次の取り組みが挙げられています。

  • 海外保険の拡大(Aspen買収):2026年2月に買収を完了し、PMI(買収後統合)は計画通り進捗。2026年度のAspen連結効果は修正利益ベースで+450億円程度を見込み、海外保険事業の成長を加速させる計画です。一方で、Aspen買収に伴いグループのリスク量は1.7兆円から2.1兆円へ増加しています。
  • 国内損保の収益性のさらなる向上:自動車保険・火災保険のベース収支改善やライン(引受規模)コントロールにより、2026年度も収益性の改善を計画。損保ジャパンのコンバインド・レシオは2026年度に94.9%を見込みます。
  • 政策株式の削減:2025年度は計画を上回る2,924億円を削減。2026年度は当初計画(2,000億円)を上回る2,500億円以上の削減を目指し、資本効率の改善と株主還元の原資確保につなげます。
  • 株主還元方針の強化:配当性向を中期的に50%へ引き上げる方針のもと、13期連続増配(2026年度200円予想)を計画し、機動的な自己株式取得も継続検討します。

5. 投資家が注目すべきポイント

強み(競争優位性・収益性・成長性・財務)

  • 国内損保・海外保険を二本柱に、生保・介護を加えた分散の効いた事業ポートフォリオ。
  • 損保ジャパンの料率適正化と海外保険の規律ある引受により、自然災害要因を除いても収益性が構造的に改善。
  • 13期連続増配と大型自己株式取得を両立できる資本基盤と、ターゲット(200%)を上回るESR270%の財務健全性。
  • 修正連結ROE13.4%と、目標レンジ(13〜15%)の水準を確保。

懸念点(リスク要因)

  • 2026年度は修正連結利益・連結当期利益ともに見かけ上の減益予想であり、自然災害の平年回帰や一過性益の剥落が前提。実際の自然災害が想定を上回れば下振れリスクがあります。
  • 自動車保険はコンバインド・レシオが100%超で、修理費単価の上昇が続いており、料率改定効果が追いつくかが焦点。
  • 海外保険は円換算による為替変動の影響を受けやすく(2026年3月末は1ドル159.88円)、ESRも市況・金利・為替の変動に一定の感応度があります。
  • Aspen買収に伴う統合リスク(PMIの遂行、統合費用)とリスク量の増加。
  • 国内生保の事業別ROE(7.3%)が目標を下回っている点。

今後確認すべき指標・KPI

  • 修正連結利益(平年値ベースの実力トレンド)と修正連結ROE(目標13〜15%)、修正EPS成長率(目標年率+12%超)。
  • 損保ジャパンのコンバインド・レシオ(特に自動車保険の改善度合い)。
  • Aspen連結効果(+450億円)とシナジーの実現状況、海外保険の保険収益・コンバインド・レシオ。
  • 政策株式削減の進捗(2026年度2,500億円以上)とESRの水準。
  • 配当性向の50%への引き上げペースと自己株式取得の動向。

6. まとめ

2025年度のSOMPOホールディングスは、修正連結利益5,352億円・連結当期利益6,400億円とそろって過去最高益を更新し、国内損保の収益性改善と海外保険の成長が全社を牽引しました。総還元額は2,816億円に達し、2026年度は200円への増配(13期連続)と690億円の自己株式取得を打ち出すなど、株主還元の拡充も鮮明です。

2026年度は見かけ上の減益予想となりますが、その主因は2025年度に自然災害が少なかったことの反動(一過性要因の剥落)であり、自然災害を平年並みに引き戻した平年値ベースでは修正連結利益は過去最高となる計画です。Aspen連結による海外保険の拡大、国内損保の収益性向上、政策株式削減による資本効率改善が、中期的な成長シナリオの柱となります。

投資家としては、過去最高益の「中身」を構造的改善と一過性要因に切り分けたうえで、平年値ベースの実力トレンド、修正連結ROE、Aspenのシナジー実現、そして配当性向50%に向けた還元強化の進捗を継続的に確認していくことが重要と考えられます。なお、事業構造の詳細な定義や個別の補足数値のうち本資料で明示されていない項目については、資料上では確認できません。

※本記事は公開情報をもとにした分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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