損保3メガ(東京海上・MS&AD・SOMPO)

【損保3メガ比較】東京海上・MS&AD・SOMPO ― 2026年3月期決算を横並びで読み解く

決算サマリー 2026.07.28
【損保3メガ比較】東京海上・MS&AD・SOMPO ― 2026年3月期決算を横並びで読み解く

はじめに

本記事では、損害保険3メガ――東京海上ホールディングス(8766)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725)、SOMPOホールディングス(8630)――の2026年3月期(2025年度)決算説明資料をもとに、業績・株主還元・資本健全性・成長戦略を横並びで整理します。個社ごとの詳細は各社の記事をご参照ください。

※本記事は各社が公開したIR資料をもとに作成したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

【重要】比較にあたっての注意

3社は利益指標や会計基準が統一されていません。東京海上とSOMPOは主指標をIFRSベースの独自利益(修正純利益/修正連結利益)で開示する一方、MS&ADは2025年度実績を日本基準の当期純利益で開示し、グループ修正利益・ROE・ESRといった指標は今回の決算説明資料には記載がありません。したがって以下の数値は「各社が公表した値をそのまま並べたもの」であり、単純な優劣比較には適さない点にご留意ください。

目次

1. 損保3メガの横顔

3社はいずれも国内損害保険を母体に、生命保険・海外保険・関連事業へ多角化したグローバル保険グループです。ただし利益の源泉となる地域・事業の構成には違いがあります。

  • 東京海上HD:保険とソリューションを合わせた事業規模(Total Business Volume)は約8.7兆円。修正純利益の地域別構成は北米62%・国内損保26%・ブラジル4%と、北米を軸にグローバル分散が進むのが特徴です。
  • MS&AD:正味収入保険料(損保)は約5兆円規模。三井住友海上・あいおいニッセイ同和の国内損保2社を中核に、海外保険・国内生保へ分散しており、両社の統合(合併)が進行中です。
  • SOMPO:損保ジャパンを中核に、海外(Sompo International)、国内生保(ひまわり生命)、介護(SOMPOケア)まで手掛けるのが特色。2026年2月にAspenの買収を完了し海外を強化しました。
東京海上ホールディングスの決算説明資料より:修正純利益の地域別構成(北米62%・国内損保26%・ブラジル4%ほか)。グローバルに分散した事業ポートフォリオを示す。

2. 業績比較(2025年度実績)

まず2025年度(2026年3月期)の実績です。前述のとおり利益指標の定義が異なるため、各社が主指標とする利益を併記します。

トップライン(保険料・収益)

  • 東京海上HD:Total Business Volume 約8.7兆円
  • MS&AD:正味収入保険料(損保)5兆47億円(前期比+7.1%)、経常収益7兆6,530億円
  • SOMPO:保険収益(IFRS)5兆3,729億円(前期比+3,074億円)

利益(各社の主指標。基準が異なる点に注意)

  • 東京海上HD:修正純利益8,815億円(IFRS)。※JGAAP旧定義では6,356億円
  • MS&AD:親会社株主に帰属する当期純利益7,873億円(日本基準、+13.8%)。※IFRSベースでは5,106億円
  • SOMPO:修正連結利益5,352億円(過去最高、+2,118億円)/連結当期利益(IFRS)6,400億円(過去最高)

収益性(ROE)。独自ROEを開示するのは2社です。

  • 東京海上HD:修正ROE 12.9%(IFRS)
  • SOMPO:修正連結ROE 13.4%(前年9.2%から改善、目標13〜15%)
  • MS&AD:ROEは今回の決算説明資料では確認できません
MS&ADの決算説明資料より:グループ連結業績(正味収入保険料・経常利益・当期純利益)と事業別の利益貢献。

国内損保の採算(コンバインド・レシオ。100%割れが引受黒字の目安)は、開示のある2社がそろって改善しました。

  • MS&AD:主要2社単純合計 99.4%→95.0%(4.4ポイント改善)
  • SOMPO:損保ジャパン(E/I、自賠責・家計地震除く)98.9%→93.9%(5.0ポイント改善)
  • 東京海上HD:資料は長期戦略が中心で、国内損保単体のコンバインド・レシオは確認できません(国内損保の利益成長には言及)

3. 株主還元の比較

株主還元は3社とも積極化しており、増配トレンドが共通しています。

1株当たり配当(2026年度予想)と連続増配

  • 東京海上HD:245円(前年比+27円、+12.4%)、15期連続増配
  • SOMPO:200円(前年比+33%)、13期連続増配。配当性向を中期的に50%へ引き上げる方針
  • MS&AD:170円(前年160円から+10円)

自己株式取得・総還元

  • 東京海上HD:2026年度に年間4,000億円の自己株式取得方針
  • SOMPO:2025年度の総還元額2,816億円(配当1,356億円+自己株式取得1,460億円)に加え、690億円の追加取得を決定
  • MS&AD:配当以外の還元(自己株式取得など)の具体的内容は本資料では確認できません
SOMPOホールディングスの決算説明資料より:株主還元(総還元額2,816億円、配当200円で13期連続増配、配当性向50%方針)。

4. 資本健全性と成長戦略

資本健全性(ESR。経済価値ベースのソルベンシー指標)

  • 東京海上HD:268%(2026年3月末)
  • SOMPO:270%(2026年3月末、前年256%。ターゲット200%以上)
  • MS&AD:ESRは本資料では確認できません(連結その他有価証券の含み益は約2兆3,711億円)

成長戦略の方向性

  • 東京海上HD:長期ビジョン「Aspiration 2035」で修正純利益17,000億円以上・修正ROE17%以上を掲げ、利益倍増を志向。2026年3月にBerkshire Hathaway Groupとの戦略的提携(当初約2.5%取得)を公表し成長の加速装置と位置づけ。規律あるM&A(大型買収のROI 27.3%)も特徴です。
  • MS&AD:国内損保2社(三井住友海上×あいおいニッセイ同和)の統合を推進(合併関連費用425億円を計上)。海外保険が当期純利益+42.0%と成長を牽引。2026年度予想からIFRSベースへ移行します。
  • SOMPO:2026年2月にAspenの買収を完了し海外保険を強化(2026年度の連結効果は修正利益ベースで約+450億円)。政策株式の削減(2025年度2,924億円)と配当性向50%方針で資本効率と還元を両立。修正EPS成長率は年率+12%超が目標です。

5. 投資家が注目すべきポイント(3社の違い)

利益規模と収益性:主指標ベースの利益規模は東京海上が最大です。ROEを開示する東京海上(12.9%)とSOMPO(13.4%)はいずれも二桁で、SOMPOがやや高い水準。MS&ADはROE・修正利益の開示が乏しく、他2社との横比較には次回以降の開示を待つ必要があります。

会計基準の移行:3社ともIFRSベースの利益開示へ移行する局面にあり、利益の「見え方」が変わります。とくにMS&ADは日本基準7,873億円とIFRS 5,106億円の差(約2,767億円、主に政策株式売却損益)に注意が必要です。過年度比較の連続性が崩れる点は3社共通の論点です。

2026年度の見通し:東京海上は修正純利益9,500億円(IFRS)と増益計画。SOMPOは修正連結利益5,000億円と見かけ減益ですが、自然災害の平年回帰が主因で平年ベースでは増益。MS&ADはIFRS当期利益4,250億円(政策株式売却益の剥落で減益)。いずれも「見かけの数字」と「実力」を切り分けて読むことが重要です。

共通のリスク:自然災害の激甚化、海外比率の高まりによる為替・金利感応度、政策株式削減の進捗などは3社に共通する論点です。

6. まとめ

2026年3月期は、国内損保の採算改善と海外事業の成長を背景に、損保3メガがそろって好調な決算と積極的な株主還元を示しました。方向性としては、東京海上がグローバル分散と長期ビジョンで先行し、SOMPOが高いROEと株主還元強化・海外M&Aで続き、MS&ADが国内2社統合とIFRS移行という構造改革の途上にある、という違いが読み取れます。

ただし利益指標・会計基準が各社で異なるため、横並びの数値だけで優劣を判断するのは禁物です。今後は、各社のIFRSベースの利益・ROEの推移、コンバインド・レシオの改善持続性、株主還元方針の実行度合いを継続的に確認していくことが、3社を見極めるうえでのポイントになります。

※本記事は公開情報をもとにした分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

Articles

株主優待

記事がありません。

個人投資家・企業様各位

目次