企業会計基準委員会(ASBJ)

【会計基準】開示後発事象には何が該当する?ASBJ補足文書の例示と開示内容を整理

投資の知識 2026.10.09
【会計基準】開示後発事象には何が該当する?ASBJ補足文書の例示と開示内容を整理

※本記事は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2026年1月9日に公表した補足文書「開示後発事象の例示及び開示内容の例示について」と、同日公表の企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」の記載内容を整理したものです。個別の会計処理や開示の判断にあたっては原文をご確認のうえ、監査人などの専門家にご相談ください。

決算書の注記でよく目にする「重要な後発事象」。決算日のあとに起きた出来事のうち、翌期以降の業績や財政状態に重要な影響を与えるものは、注記で開示されます。これを「開示後発事象」と呼びます。では、具体的にどんな出来事が該当し、注記には何が書かれるのでしょうか。ASBJが公表した補足文書をもとに整理します。

目次

補足文書の位置づけ

  • 公表:2026年1月9日、企業会計基準委員会(ASBJ)。
  • 目的:同日に廃止された日本公認会計士協会の監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」(最終改正2024年9月26日)に載っていた開示後発事象の例示と開示内容の例示を、実務の参考として引き続き提供すること。
  • 性格:企業会計基準や適用指針を追加・変更するものではなく、基準を適用する際の参考資料です。
  • 更新:今後この文書を更新する予定はないとされています。

なお、後発事象に関する初の包括的な会計基準である企業会計基準第41号は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます(同基準第13項)。

なぜ基準本文ではなく「補足文書」なのか

ASBJは第41号の開発時に、旧実務指針の例示と付表を基準本文へ移すかどうかを検討しました。補足文書は、本文に入れなかった理由を次のように説明しています。

  • 修正後発事象と開示後発事象のどちらに当たるかは、一定の判断を要する。
  • 第41号は「開示目的」を定めており、注記する項目や詳しさは、企業がその目的に照らして判断するものである。
  • 特定の事象ごとに開示内容を列挙するとチェックリストのように使われるおそれがあり、開示目的を定める考え方と整合しない。
  • 付表の開示事項は、会計基準に取り込むには細かすぎる。

一方で、これらの例示は実務で広く参考にされてきたため、引き続き周知すべきだという意見もありました。そこで、旧実務指針の内容を別紙にそのまま載せる形で補足文書が公表されました。

基準が求める注記(第41号 第9項・第11項)

  • 開示目的:開示後発事象が、将来の財政状態・経営成績・キャッシュ・フローに与える影響を、財務諸表の利用者が理解できるだけの十分な情報を開示すること。
  • 注記事項①:重要な開示後発事象の内容と影響額など。
  • 注記事項②:影響額を見積もれない場合は、その旨と理由。

開示後発事象の例示(別紙1)

別紙1は、財務諸表提出会社・子会社・関連会社について6つの分類で例示を挙げ、さらに連結財務諸表に固有の事象を示しています。各事象には原則として「重要な」「多額な」といった限定が付いています。第41号が注記を求めているのも「重要な」開示後発事象です(第11項)。

分類主な事象(★=損失が出る場合は修正後発事象になることも多い項目)
会社が営む事業事業の譲受、事業の譲渡★、合併、会社分割、現物出資等による部門の分離★、事業からの撤退★、事業部門の操業停止★、資産の譲渡★、契約の締結・解除★、大量の希望退職者の募集、主要な取引先の倒産★、主要な取引先への債権放棄★、設備投資、新規事業(出資・会社設立・部門設置など)
資本の増減など新株の発行(新株予約権などの行使・発行を含む)、資本金・準備金の減少、株式交換・株式移転、自己株式の取得・処分(ストック・オプションなどを含む)・消却、株式併合・株式分割
資金の調達・返済など社債の発行、社債の買入償還・繰上償還(デット・アサンプションを含む)、借換えや借入条件の変更による負担の増減、資金の借入
子会社など子会社などを援助するための負担の発生★、子会社などの株式の売却★、子会社などの設立、株式取得による会社などの買収、子会社などの解散・倒産★
会社の意思と関係なく被った損失火災・震災・出水などによる損害、外国での戦争の勃発などによる損害、不祥事などを原因とする信用失墜に伴う損失
その他経営改善策・計画の決定(デット・エクイティ・スワップを含む)★、係争事件の発生・解決★、資産の担保提供、投資に関する事象(取得・売却など)★
連結財務諸表に固有連結範囲の変更、セグメント情報の変更、未実現損益の実現

★印の項目について補足文書は、損失が発生するときは修正後発事象(財務諸表の数字そのものを修正する後発事象)となることも多い点に注意を促しています。

「いつ発生したか」の目安(別紙2)

後発事象かどうかは、その事象が決算日後に「発生」したかで決まります。別紙2は事象ごとに発生の時期を示しており、大きく次のように分けられます。

発生の時期主な事象
取締役会などの決議があったとき会社分割、部門の分離、事業からの撤退、操業停止、契約の締結・解除、希望退職者の募集、取引先への債権放棄、設備投資、新規事業、資本の増減に関する事象すべて、社債の発行・償還、子会社などの援助・設立、経営改善策の決定
合意が成立したとき、または事実を公表したとき事業の譲受・譲渡、合併、資産の譲渡、借換え・借入条件の変更、資金の借入、子会社などの株式の売却、株式取得による買収、資産の担保提供
事実を認知したとき主要な取引先の倒産、災害による損害、戦争の勃発などによる損害、不祥事などによる信用失墜(損失が生じる可能性を認知したとき)
複数の時点が示されているもの子会社などの解散・倒産(決議時または事実の認知時)、係争事件(訴えの提起時または解決時)、投資に関する事象(決議時または発生原因となる事実の認知時)
連結に固有の事象連結範囲・セグメント情報の変更(意思決定を行ったとき)、未実現損益の実現(実現をもたらす事象が起きたとき)

注記には何を書くのか(別紙2)

別紙2は事象ごとに開示する事項を列挙しています。事象によって細部は異なりますが、おおむね次の要素で構成されています。

  • その旨と、目的または理由
  • 相手方の名称(譲渡先、合併相手、借入先、取引先など)
  • 対象の内容や規模(事業内容、直近期の売上高、資産・負債の額、株式数など)
  • 時期やスケジュール
  • 金額や影響額(譲渡価額、損害額、損失見込額など)
  • 営業活動などへの重要な影響
  • その他の重要な事項や特約

代表的な事象について、別紙2が挙げる開示事項を要約すると次のとおりです。

合併

目的、相手会社の名称、合併の方法と合併後の社名、合併比率や発行する株式・引き継ぐ資産負債の額、相手会社の事業内容と規模(売上高・当期純利益・純資産・従業員数など)、合併の時期、配当起算日。

自己株式の取得

取得の理由、取得の方法・株式数・取得価額、取得の時期。

主要な取引先の倒産

倒産の原因、取引先の名称と取引内容、取引先の状況と負債総額、自社の債権額と保証債務の額、営業活動などへの影響。

火災・震災などによる損害

被害の状況、損害額、復旧の見通し、営業活動などへの影響。

重要な係争事件の発生・解決

事件の内容と相手方、損害賠償の請求額などの要求内容、事件に対する会社の意見、裁判や交渉の進展状況、判決・和解などがあった場合はその内容。

大量の希望退職者の募集

募集の理由、対象者と募集人員、募集期間、希望退職による損失の見込額。

多額な社債の発行

社債の種類と数、発行価額と総額、利率、償還の方法と期間、新株予約権付社債の場合は新株予約権の内容、発行の時期、担保、資金の使途。

読むときのポイント

  • 例示はチェックリストではない:補足文書は基準を追加・変更するものではありません。何をどこまで書くかは、第41号の開示目的に照らして企業が判断します。
  • 修正か開示かの判断が先:★印の項目のように、損失を伴う事象は修正後発事象に当たることも多く、区分の判断が必要です。
  • 影響額が出せないときは理由を書く:見積もりができない場合は、その旨と理由の注記が求められます(第41号 第11項)。

出典

※本記事は上記資料の記載内容を要約・整理したものであり、原文の全文ではありません。正確な内容は原文をご確認ください。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

Articles

株主優待

記事がありません。

個人投資家・企業様各位

目次