※本記事は第一稀元素化学工業が公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
第一稀元素化学工業の2026年3月期通期決算は、売上高35,751百万円(前期比6.3%増)、営業利益3,479百万円(同52.4%増)となった。戦略分野では半導体用途が減収となった一方、SOFC用途が市場機会を捉えて増収となり、自動車排ガス浄化触媒分野および基盤分野も堅調に推移した。営業利益は人的投資に伴う費用や研究開発費、新基幹システム稼働に関連する費用の増加があった一方、売上高の増加、高額在庫による利益圧迫要因の解消、ベトナム子会社の本格稼働に伴う費用負担の減少等により、2026年2月12日公表の連結業績予想に対して達成率108.7%となった。
連結業績(2026年3月期 実績)
売上高は35,751百万円で前期比2,110百万円の増加。売上総利益は10,333百万円(前期比23.7%増)、営業利益は3,479百万円(同52.4%増)、営業利益率は9.7%と前期の6.8%から2.9%上昇した。経常利益は3,255百万円(同414.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,514百万円(同217.4%増)、一株当たり当期純利益は103.85円となった。対ドル為替レートは150.67円(前期152.62円)。当期の減価償却費は3,317百万円、研究開発費は1,419百万円。営業利益の前期比増減要因は、①為替影響-44百万円、②売上による影響+415百万円、③売上原価変動による影響+1,152百万円、④ベトナム子会社の影響+458百万円、⑤販売費および一般管理費-784百万円と説明されている。
| 項目 | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 増減 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 35,751 | 33,641 | 2,110 | 6.3% |
| 売上総利益 | 10,333 | 8,352 | 1,980 | 23.7% |
| 営業利益 | 3,479 | 2,282 | 1,196 | 52.4% |
| 営業利益率 | 9.7% | 6.8% | 2.9% | 43.4% |
| 経常利益 | 3,255 | 632 | 2,622 | 414.8% |
| 親会社株主帰属純利益または純損失 | 2,514 | 792 | 1,722 | 217.4% |
| 一株当たり当期純利益(円) | 103.85 | 32.64 | 71.21 | 218.2% |
| 対ドル為替レート(円) | 150.67 | 152.62 | -1.95 | – |

分野別の販売実績
戦略分野の売上高は5,457百万円(前期比6.1%増、構成比15.3%)。うち半導体・エレクトロニクスは1,618百万円(同8.1%減)で、電子部品用途はコンデンサ需要が堅調に推移し前期比16.1%増収となった一方、半導体用途は装置関連が堅調に推移したものの研磨材関連でSiCウエハのサプライチェーン構造変化の影響による当社材料需要の減少が継続し前期比25.3%減収となった。エネルギーは1,686百万円(同20.8%増)で、二次電池用途が前期比2.7%減収となった一方、SOFC用途はAI市場成長に伴う安定電力源としてのデータセンター需要の拡大が継続し前期比35.5%増収。ヘルスケアは2,151百万円(同8.4%増)で、生体材料用途は一部顧客での在庫消化完了により需要の回復が見られ前期比9.1%増収となった。自動車排ガス浄化触媒分野は22,424百万円(同7.7%増)で販売数量は前期比7.2%増加、基盤分野は7,870百万円(同2.4%増)でブレーキ用途が前期比14.8%増収と牽引した一方、耐火物用途は同8.1%減収、ブレージング用途は同3.1%減収となった。
| 分野 | 2026年3月期実績(百万円) | 構成比 | 2025年3月期実績(百万円) | 構成比 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戦略分野 | 5,457 | 15.3% | 5,142 | 15.3% | 6.1% |
| 半導体・エレクトロニクス | 1,618 | 4.5% | 1,761 | 5.2% | -8.1% |
| エネルギー | 1,686 | 4.7% | 1,396 | 4.2% | 20.8% |
| ヘルスケア | 2,151 | 6.0% | 1,983 | 5.9% | 8.4% |
| 自動車排ガス浄化触媒分野 | 22,424 | 62.7% | 20,816 | 61.9% | 7.7% |
| 基盤分野 | 7,870 | 22.0% | 7,682 | 22.8% | 2.4% |
| 合計 | 35,751 | 100.0% | 33,641 | 100.0% | 6.3% |

2027年3月期 通期業績予想
2027年3月期の連結業績予想は、売上高37,000百万円(前期比3.5%増)、営業利益3,000百万円(同13.8%減)、経常利益2,000百万円(同38.6%減)、親会社株主帰属純利益1,500百万円(同40.3%減)。償却前営業利益は6,400百万円(同5.8%減)を見込む。前提為替レートは1米ドル151円。販売数量は一部需要の低下を背景に減少の見込みである一方、売上高はハイブリッド車需要の堅調な推移、戦略分野における事業機会拡大の影響を背景として増収予定。利益面は戦略分野における中長期的な成長を見据えた研究開発費増加、人件費ベースアップ、安定稼働を目的とした保守・修繕費増加等を背景に減益予定としている。
| 項目 | 2027年3月期 業績予想 | 売上高比率 | 2026年3月期 実績 | 売上高比率 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 37,000 | 100.0% | 35,751 | 100.0% | 3.5% |
| 売上総利益 | 10,700 | 28.9% | 10,333 | 28.9% | 3.6% |
| 営業利益 | 3,000 | 8.1% | 3,479 | 9.7% | -13.8% |
| 経常利益 | 2,000 | 5.4% | 3,255 | 9.1% | -38.6% |
| 親会社株主帰属純利益 | 1,500 | 4.1% | 2,514 | 7.0% | -40.3% |
| 償却前営業利益 | 6,400 | 17.3% | 6,796 | 19.0% | -5.8% |
| 分野 | 2027年3月期 業績予想(百万円) | 構成比 | 2026年3月期 実績(百万円) | 構成比 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戦略分野 | 5,900 | 15.9% | 5,457 | 15.3% | 8.1% |
| 半導体・エレクトロニクス | 1,700 | 4.6% | 1,618 | 4.5% | 5.1% |
| エネルギー | 2,350 | 6.4% | 1,686 | 4.7% | 39.4% |
| ヘルスケア | 1,850 | 5.0% | 2,151 | 6.0% | -14.0% |
| 自動車排ガス浄化触媒分野 | 23,700 | 64.1% | 22,424 | 62.7% | 5.7% |
| 基盤分野 | 7,400 | 20.0% | 7,870 | 22.0% | -6.0% |
| 合計 | 37,000 | 100.0% | 35,751 | 100.0% | 3.5% |

株主還元
2026年3月期の配当実績はDOE1.9%、配当性向27.0%(2022年3月期は配当性向30.2%)。中期経営計画の中期目標(2027年3月期~2029年3月期)および後期目標(2030年3月期~2032年3月期)では、いずれもDOE1.8%以上、配当性向30%を掲げている。2026年3月期~2032年3月期のキャッシュ・アロケーションでは株主還元に65億円を配分し「DOE1.8%、配当性向30%で持続的な還元を実現」としており、2026年3月期実績は8億円。キャッシュフロー計算書上の配当金の支払額は678百万円。財務規律として自己資本比率40~60%を掲げている。
中期経営計画「DK-One Next」の進捗
10年間の中期経営計画「DK-One Next」は前期(2023年3月期~2026年3月期)の4年間が終了した。前期最終年度の2026年3月期は売上高358億円、営業利益35億円、EBITDA68億円、ROIC4.7%、ROE6.6%となり、前期目標(2022年設定)の売上高400億円・営業利益40億円・EBITDA90億円・ROIC6.0%に対して目標は未達となった。資料では、外部環境の変化の影響を受けつつも一定の成長を確保したが、戦略分野の立ち上がりの遅れ等が影響したと説明している。中期目標(2026年更新)は売上高410億円、営業利益40億円、EBITDA75億円、ROIC5%、ROE6%、後期目標(2025年設定)は売上高500億円以上、営業利益75億円以上、EBITDA105億円以上、ROIC9%以上、ROE11%以上。資本コストはCAPMに基づく株主資本コストを7~8%、WACCを5~6%と認識し、2032年3月期にROEおよびROICが資本コストを上回る収益構造の確立を目指す。PBRは2022年3月期以降1倍を下回っていたが、地政学テーマによるレアアース関連銘柄としての存在感の高まりを背景に1.0倍以上に回復したとしている。中期の重点施策として、①戦略分野の拡大、②ベトナム事業の収益構造改革、③ROIC管理の高度化、④マネジメント基盤の強化の4点を掲げる。

トピック(ベトナム事業ほか)
ベトナム子会社は2012年設立、2016年に旧工場稼働(実証生産)、2018年に新工場着工(商業生産)、2023年に新工場完工を経て、2025年に本格稼働した。ジルコニウム鉱石起点の供給網構築により、鉱石から製品までを一気通貫で手掛けるサプライチェーンを構築しているとする。当期の営業利益増減要因ではベトナム子会社の影響が+458百万円(前期立上げ費用の解消+571百万円、本格稼働に伴う収益・費用影響-112百万円)となった。中期経営計画では、ベトナム事業について2025年設定の中期目標よりも早く成果が顕在化しており、2029年3月期への利益貢献を見込むとしている。このほか当期のトピックとして、第三者分析によるスポンサードレポートの発行、従業員に対する譲渡制限付株式としての自己株式処分の実施を挙げている。財務面では、総資産66,898百万円(前期末64,754百万円)、純資産39,021百万円、自己資本比率57.5%、BPS1,592.13円。営業活動によるCFは5,157百万円、投資活動によるCFは-1,482百万円で、フリーCFは3,675百万円と前期比728百万円増加した。
※本記事は第一稀元素化学工業が公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。