※本記事はセイコーエプソンが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
セイコーエプソンが2026年5月1日に公表した2025年度(2026年3月期)通期決算は、売上収益が14,133億円(対前期+3.7%)と増収となった一方、事業利益は838億円(同-6.5%)と減益になった。Fiery買収にともない計上したのれんの一部について259億円の減損損失を計上したことなどから、営業利益は496億円(同-34.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は182億円(同-67.0%)と大幅な減益となった。2026年度は売上収益14,500億円、事業利益900億円と増収増益を見込み、1株当たり年間配当は6円増配の80円を予想している。
連結業績(2025年度 通期実績)
資料では、売上収益はプリンティングソリューションズを中心に増収、事業利益はビジュアルコミュニケーションの減収影響と米国関税影響により減益、営業利益以下はFieryなどで減損損失を計上した、と説明している。2025年2月3日公表の前回予想(売上収益13,900億円、事業利益750億円)に対しては、売上収益が+233億円(+1.7%)、事業利益が+88億円(+11.7%)と上振れた。事業利益の増減要因では為替影響が+114億円のプラス、米国関税コストが-220億円のマイナスとして示されている。なお第4四半期単独では、売上収益3,694億円(対前年同期+8.9%)、事業利益200億円(同+27.9%)と増収増益だったが、減損計上により営業利益は-88億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は-172億円となった。
| 項目 | 2025年度 実績 | 2024年度 実績 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 14,133億円 | 13,629億円 | +503億円(+3.7%) |
| 事業利益 | 838億円 | 896億円 | -58億円(-6.5%) |
| 事業利益率 | 5.9% | 6.6% | – |
| 営業利益 | 496億円 | 751億円 | -255億円(-34.0%) |
| 税引前利益 | 500億円 | 784億円 | -284億円(-36.2%) |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 182億円 | 552億円 | -370億円(-67.0%) |
| EPS(基本的1株当たり当期利益) | 56.81円 | 168.75円 | – |
| 為替レート USD | ¥150.69 | ¥152.47 | – |
| 為替レート EUR | ¥174.74 | ¥163.64 | – |
トピック:Fieryののれん減損損失
買収にともない計上したのれんの一部について、259億円の減損損失を計上した。背景として、2025年4月以降の米国関税政策に端を発した企業の投資に対する慎重姿勢の強まりにより、Fieryの商業印刷・産業印刷の両領域で市場環境が想定よりも悪化したことを挙げている。売上収益の大半を占める商業印刷を主とするカットシート領域は買収時の想定を下回って推移し、2025年度の売上が前年度より10%程度減少。産業印刷領域は新規顧客拡大が進展しているものの、業績への寄与には当初想定より時間を要しているとした。急速な売上回復はないものとして事業計画および将来収益の見通しを変更し、減損テストにおいて回収可能価額が帳簿価額を下回ったため減損損失を計上している。一方で、既存事業のプレゼンス・収益構造などの変化はなく、産業印刷領域でのデジタル化の進展という成長トレンドも継続しており、中期的な成長ドライバーとしての期待に変化はないと説明している。
セグメント別の状況(2025年度 通期実績)
プリンティングソリューションズは売上収益10,295億円(対前年同期+5.0%)、セグメント利益1,206億円(同-3.4%)。内訳では、オフィス・ホームプリンティングが売上収益6,952億円(同+2.2%)・事業利益595億円(同-6.9%)、商業・産業プリンティングが売上収益3,344億円(同+11.6%)・事業利益611億円(同+0.3%)となった。ビジュアルコミュニケーションはプロジェクターの需要停滞が継続し、売上収益1,814億円(同-11.0%)、セグメント利益123億円(同-57.8%)と減収減益。プロジェクターの販売数量は約130万台(伸長率-17%)だった。マニュファクチャリング関連・ウエアラブルは売上収益2,061億円(同+13.6%)、セグメント利益108億円と、前期の-32億円から黒字化した。
| セグメント/事業 | 指標 | 2025年度 実績(億円) | 2024年度 実績(億円) | 対前年同期 |
|---|---|---|---|---|
| プリンティングソリューションズ | 売上収益 | 10,295 | 9,801 | +5.0% |
| プリンティングソリューションズ | セグメント利益 | 1,206 | 1,248 | -3.4% |
| オフィス・ホームプリンティング | 売上収益 | 6,952 | 6,805 | +2.2% |
| オフィス・ホームプリンティング | 事業利益 | 595 | 639 | -6.9% |
| 商業・産業プリンティング | 売上収益 | 3,344 | 2,998 | +11.6% |
| 商業・産業プリンティング | 事業利益 | 611 | 609 | +0.3% |
| ビジュアルコミュニケーション | 売上収益 | 1,814 | 2,038 | -11.0% |
| ビジュアルコミュニケーション | セグメント利益 | 123 | 290 | -57.8% |
| マニュファクチャリング関連・ウエアラブル | 売上収益 | 2,061 | 1,815 | +13.6% |
| マニュファクチャリング関連・ウエアラブル | セグメント利益 | 108 | -32 | – |
| 連結合計 | 売上収益 | 14,133 | 13,629 | +3.7% |
| 連結合計 | 事業利益 | 838 | 896 | -6.5% |

2026年度 通期業績予想
2026年度は、売上収益14,500億円(対前期+2.6%)、事業利益900億円(同+7.4%)、営業利益860億円(同+73.5%)、親会社の所有者に帰属する当期利益590億円(同+224.1%)を見込む。資料では、売上収益は各セグメントで伸長を見込み、事業利益はプレシジョンイノベーションを中心に増益、営業利益以下は特別な費用発生は見込まないとしている。前提為替レートはUSD 151.00円、EUR 175.00円。事業計画の前提としてはオフィス・ホームIJPの本体販売台数1,720万台(伸長率+1%)、プロジェクター販売数量約130万台(同+0%)を予想している。
| 項目 | 2026年度 予想 | 2025年度 実績 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 14,500億円 | 14,133億円 | +367億円(+2.6%) |
| 事業利益 | 900億円 | 838億円 | +62億円(+7.4%) |
| 事業利益率 | 6.2% | 5.9% | – |
| 営業利益 | 860億円 | 496億円 | +364億円(+73.5%) |
| 税引前利益 | 840億円 | 500億円 | +340億円(+67.9%) |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 590億円 | 182億円 | +408億円(+224.1%) |
| EPS(基本的1株当たり当期利益) | 184.13円 | 56.81円 | – |
| 前提為替レート USD/EUR | ¥151.00/¥175.00 | ¥150.69/¥174.74 | – |
2026年度からは事業セグメントを「プレシジョンイノベーション」「インダストリアル&ロボティクス」「オフィス・ホームプリンティング」「ビジュアル&ライフスタイル」の4区分に変更する。新区分ベースの予想は、プレシジョンイノベーションが売上収益1,820億円(対前年同期+8.6%)・セグメント利益500億円(同+13.6%)、インダストリアル&ロボティクスが売上収益3,100億円(同+4.1%)・セグメント利益240億円(同+18.8%)、オフィス・ホームプリンティングが売上収益6,980億円(同+0.8%)・セグメント利益560億円(同-8.5%)、ビジュアル&ライフスタイルが売上収益2,520億円(同+0.4%)・セグメント利益200億円(同+18.2%)。

株主還元
基本方針は「成長戦略に基づく投資を行ったうえで、積極的な利益還元に取り組む」。配当はDOE(配当総額/親会社の所有者に帰属する持分)3%を下限とする安定配当を実施し、自己株式取得は株価水準や資金の状況などを総合的に勘案して機動的に実施するとしている。2026年度は6円増配の1株当たり年間配当80円(中間配当40円、期末配当40円)を予想する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 2026年度 1株当たり年間配当(予想) | 80円(中間40円・期末40円) |
| 2025年度 1株当たり年間配当 | 74円 |
| 前期比 | 6円増配 |
| 配当方針 | DOE 3%を下限とする安定配当を実施 |
| 自己株式取得 | 株価水準や資金の状況などを総合的に勘案し、機動的に実施 |

長期ビジョン・中期経営計画
長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」のもと、中期経営計画をPhase1(2026-2028年)「成長に向けた事業基盤の変革」、Phase2(2029-2031年)「成長モデルへの転換」、Phase3(2032-2035年)「成長を生み続ける事業構造の確立」の3段階で進める。Phase1では収益基盤の変革と競争力強化を進め、将来成長に向けた資源配分を着実に実行するとし、2028年度目標としてROIC 8%を掲げる。主要経営指標では、FY28中期目標として売上収益15,000億円、ROS 8.0%、ROE 10.0%、ROIC 8.0%を示しており、FY25実績はROS 5.9、ROA 5.6、ROE 2.2、ROIC 5.5、FY26予想はROS 6.2%、ROA 5.9%、ROE 7.0%、ROIC 5.9%となっている。2026年度は中期経営計画Phase1の1年次として、プレシジョンイノベーションで需要拡大に向けた投資を行い市場以上の伸長を目指すとともに、オフィス・ホームプリンティングでは新興市場の市場拡大機会をとらえつつ生産や販売の効率化を進める方針。

※本記事はセイコーエプソンが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。