※本記事はエムスリーが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
エムスリーは2026年3月期(資料内表記:FY2025)通期の連結業績を発表した。売上収益は351,363百万円(前年比+23%)、営業利益は73,547百万円(同+17%)、税引前当期利益は76,276百万円(同+18%)、当期利益は54,046百万円(同+22%)となった。海外事業を中心に67億円の減損損失をQ4に計上したものの、既存事業は堅調に推移し、売上・利益は2桁台の成長。コロナ特需期も含め、実質的に過去最高の営業利益を実現したとしている。主要セグメントの全てで増収増益を達成した。
連結業績(当期 実績)
単位:百万円。COVID関連を除く売上成長率は同程度の+24%。減損損失の内訳は、医療機関向けの支援事業(MP)で21億円(2026年診療報酬改定の影響による事業環境見通しの悪化)、海外で46億円(英国:医師の大規模ストライキ・医療関連政策の方針変更等による事業環境の継続的な悪化、米国:ワクチン関連政策の方針変更等による治験事業へのネガティブ影響)と、いずれも医療政策転換等の外部環境の変化が主因とされている。
| 項目 | FY2024 | FY2025 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 284,900 | 351,363 | +23% |
| 営業利益 | 62,971 | 73,547 | +17% |
| 税引前当期利益 | 64,785 | 76,276 | +18% |
| 当期利益 | 44,340 | 54,046 | +22% |

セグメント別の状況
国内メディカルプラットフォーム(MP)は売上収益107,830百万円(+18%)、利益35,918百万円(+5%)。製薬マーケティング支援や医療現場DXが堅調なモメンタムを維持し、製薬マーケティング支援のFY2025末時点の受注残は前年同期比+12%、受注残は372億円。エビデンスソリューション(ES)は売上収益24,521百万円(+1%)、利益5,120百万円(+18%)。キャリアソリューション(CS)は売上収益22,799百万円(+9%)、利益5,925百万円(+5%)で、医師・薬剤師向けに加え産業医派遣サービス等も貢献。サイトソリューション(SS)は売上収益54,353百万円(+16%)、利益5,766百万円(+6%)。ペイシェントソリューション(PS)は売上収益56,877百万円(+159%)、利益2,686百万円(+226%)と、買収効果および既存事業の堅調な成長により売上収益ミックスが改善し、利益は不動産売却益の計上もあり売上以上に増加した。エマージング事業群は売上収益2,230百万円(-9%)、利益4,878百万円(+386%)で、関連会社株式売却益(約40億円)等が寄与。海外は売上収益86,921百万円(+8%)、利益14,898百万円(+1%)で、今年度の減損を除くと営業利益は+11%となる。
| セグメント | 指標 | FY2024 | FY2025 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| メディカルプラットフォーム | 売上収益 | 91,566 | 107,830 | +18% |
| メディカルプラットフォーム | 利益 | 34,105 | 35,918 | +5% |
| エビデンスソリューション | 売上収益 | 24,244 | 24,521 | +1% |
| エビデンスソリューション | 利益 | 4,345 | 5,120 | +18% |
| キャリアソリューション | 売上収益 | 20,914 | 22,799 | +9% |
| キャリアソリューション | 利益 | 5,656 | 5,925 | +5% |
| サイトソリューション | 売上収益 | 47,043 | 54,353 | +16% |
| サイトソリューション | 利益 | 5,422 | 5,766 | +6% |
| ペイシェントソリューション | 売上収益 | 21,919 | 56,877 | +159% |
| ペイシェントソリューション | 利益 | 824 | 2,686 | +226% |
| エマージング事業群 | 売上収益 | 2,453 | 2,230 | -9% |
| エマージング事業群 | 利益 | 1,003 | 4,878 | +386% |
| 海外 | 売上収益 | 80,570 | 86,921 | +8% |
| 海外 | 利益 | 14,745 | 14,898 | +1% |

通期業績予想(FY2026)
資料にはFY2026の具体的な数値目標は開示されておらず、定性的な見通しが示されている。各事業で成長継続を見込むものの、先行投資の拡大や2026年診療報酬改定によるマイナス影響を想定。海外は各地域で堅調な成長を見込み、米国治験事業は引き続き再成長に向けた取組みを推進する。展開事業数の増加によりシナジー創出のポテンシャルは拡大するとしている。事業面では、製薬マーケティング支援は製薬企業の戦略パートナーとして課題解決型提案で本質的なDX化を推進し、医療現場DX等も成長を継続する見込み。営業体制改善の取組みも引き続き強化する。医師および薬剤師向け事業はいずれも引き続き堅調な成長を見込む。海外についてはFY2026の新規買収は織り込んでいない。ペイシェントソリューションはM3との協業を通じたサービス開発や相互営業も含め、国内外で事業拡大を目指すとしている。

株主還元
基本方針は、経営基盤を強化し新たな事業展開に備えることを目的に利益を内部留保し再投資すること。資金需要動向とキャッシュ・フローの状況とを総合的に勘案し、株主還元の水準を決定するとしている。1株当たり配当金は22円、配当金総額147億円、配当性向30.3%。親会社所有者帰属当期利益491億円に対し、剰余金の配当と自己株式取得を合わせて上限347億円の株主還元を実施する。自己株式取得は取得株式総数上限2,000万株(発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合3.00%)、取得価額の総額上限200億円、取得期間は2026年5月2日~2027年4月30日。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1株当たり配当金 | 22円 |
| 配当金総額 | 147億円 |
| 配当性向 | 30.3% |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 491億円 |
| 自己株式取得(上限) | 取得株式総数2,000万株(発行済株式総数比3.00%)/取得価額総額200億円 |
| 自己株式取得期間 | 2026年5月2日~2027年4月30日 |

トピックス:AI活用と中長期の成長戦略
M3は6月1日付でグループミッションを「テクノロジーを創造的に活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」に更新し、18カ国約1万7千人の全グループスタッフに発信した。「1人1円」の根本思想は変わらず、AIを核心的な武器と位置づける。AIの営業利益へのポジティブインパクトについては、効率化以外に数十の分野でAIを事業に活用し、100億円規模の営業利益を既に創出(一過性の影響を除くFY2025営業利益747億円の約15%相当)しており、今後さらに拡大する見込みとしている。企業向けサービス(ホワイト・ジャック・プロジェクト)は、イーウェルのカバレッジが加わりFY2025Q4時点で約730万人の従業員をカバー。中長期の事業成長ポテンシャルとしては、展開事業数(事業タイプ×国)が2010年度の10から2025年度は81(8.0倍)に拡大し、売上高は146億円から3,514億円(24.0倍)に成長したとしており、今後もM&Aを含め積極的な先行投資を継続する方針としている。
※本記事はエムスリーが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。