※本記事はアストロスケールホールディングスが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
アストロスケールホールディングスは2026年6月12日、2026年4月期通期の決算説明資料を公表した。Non-IFRS指標であるプロジェクト収益は11,506百万円(115億円)と前期比89.0%増となり、売上総利益は19百万円と通期で黒字を達成した。営業利益は(9,975)百万円で前期の(18,755)百万円から改善し、当期利益は(6,697)百万円だった。期末の受注残高は37,938百万円(379億円)、現預金は10,021百万円(100億円)で、2026年5月19日公表の資金調達により306億円を調達している。
連結業績(2026年4月期 通期 実績)
プロジェクト収益は既存プロジェクトの進行により11,506百万円(前期比89.0%増)となった。内訳は売上収益が5,940百万円(同141.8%増)、政府補助金収入が5,566百万円(同53.3%増)。売上総利益は、前年の第1四半期に計上した受注損失引当金繰入額(32億円)がなかったことおよびミックス改善により19百万円と黒字で着地し、売上総利益率は0.3%となった。販売費及び一般管理費のうち研究開発費は、第1四半期に開始したLEXI-P衛星製造コストの資産計上により(7,533)百万円と前期比31.0%減。その他の販管費は円安の影響にもかかわらず(8,662)百万円と同5.9%増にとどまった。営業利益は(9,975)百万円と前期比で大幅に改善し、当期利益は円安に伴う金融収益(36億円)の計上もあり(6,697)百万円となった。受注高は大型案件の受注が期ずれしたため、複数の大型受注があった前期比72.5%減の8,445百万円となった。
期初予想(レンジ)との比較では、プロジェクト収益は110億円〜130億円に対し115億円、売上収益は50億円〜60億円に対し59億円とレンジ上方で着地。政府補助金収入は60億円〜70億円の予想に対し55億円と、ISSA-J1に係る打ち上げ費用の前払い11億円に係る政府補助金収入の認識がPhase 3契約まで認められなかったためレンジ下方となった。売上総利益は損益分岐の予想に対し0億円、営業利益は(103)億円〜(93)億円に対し▲99億円、税引前当期利益・当期利益は(107)億円〜(97)億円に対し(67)億円で、為替差益36億円の計上により大幅に改善した。資料は、政府補助金収入の計上遅延と新規受注の遅れによる受注残高の減少をネガティブ要素として挙げつつ、いずれも収益認識の遅れや案件の期ずれが要因であり、事業に対する本質的な影響は軽微と評価している。
| 項目(百万円) | 2026年4月期 | 2025年4月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 受注高 | 8,445 | 30,704 | (72.5)% |
| プロジェクト収益 | 11,506 | 6,088 | 89.0% |
| 売上収益 | 5,940 | 2,456 | 141.8% |
| 政府補助金収入 | 5,566 | 3,631 | 53.3% |
| 売上原価 | (5,921) | (6,337) | (6.6)% |
| 売上総利益 | 19 | (3,880) | - |
| 売上総利益率 | 0.3% | (157.9)% | - |
| 販売費及び一般管理費(研究開発費) | (7,533) | (10,923) | (31.0)% |
| 販売費及び一般管理費(その他) | (8,662) | (8,181) | 5.9% |
| その他の収益 | 6,201 | 4,230 | 46.6% |
| 営業利益 | (9,975) | (18,755) | - |
| 営業利益率 | (167.9)% | (763.3)% | - |
| 税引前当期利益 | (6,695) | (21,550) | - |
| 当期利益 | (6,697) | (21,551) | - |

顧客区分別の受注残高
2026年4月末の受注残高は37,938百万円で、内訳は政府28,504百万円、防衛関連8,966百万円、民間467百万円。受注残高は受注済残高27,435百万円と受注内定済の案件総額10,502百万円で構成される。受注残高には、現時点では未受注であるものの競合が存在しない後続フェーズにおいて受注が期待できると認識するSBIRフェーズ3、および2025年1月に採択済のREFLEX-J(3年目以降)に係る想定受注金額が含まれる。全額拠出案件比率は94%(前期末89%)に上昇した一方、平均案件期間は2.8年(同3.6年)に短縮した。受注残高に含まれる主要プロジェクトは、政府ではELSA-Mフェーズ3・4、ISSA-J1フェーズ2、ADRAS-J2、CAT-IODフェーズA、REFLEX-J、JAXA EP燃料補給、防衛関連ではAPS-R、Orpheusプロジェクト、防衛省案件、米空軍研究所案件が挙げられている。
| 区分(百万円) | 2026年4月末 | 2025年4月末 |
|---|---|---|
| 政府 | 28,504 | 33,903 |
| 防衛関連 | 8,966 | 10,410 |
| 民間 | 467 | 99 |
| 受注残高 合計 | 37,938 | 44,413 |
| うち受注済残高 | 27,435 | 29,695 |
| うち受注内定済の案件総額 | 10,502 | 14,717 |

2027年4月期 通期業績予想
2027年4月期の業績予想は、2026年4月期と同様に受注獲得済および選定済み案件のみをもとに過去の進捗状況を勘案し、レンジで開示された。期中の新規案件獲得があれば適宜業績予想を調整する方針としている。プロジェクト収益は12,500百万円〜17,000百万円(前年比+8.6%〜+47.7%)を見込む。上限値の170億円は契約済み案件が遅延なく進行した場合の水準に相当し、ISSA-J1 Phase 3の契約が今期実施された場合は打ち上げ費用に対応する収益認識(約11億円)を期待するとしている。下限値の125億円には案件スケジュールの遅延やその他外部要因による潜在的影響を加味した。為替前提は1米ドル=155.00円、1ユーロ=180.00円、1ポンド=205.00円。
| 項目(百万円) | 2027年4月期 予想 | 2026年4月期 実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| プロジェクト収益 | 12,500 〜 17,000 | 11,506 | +8.6% 〜 +47.7% |
| 売上収益(IFRS) | 7,000 〜 9,000 | 5,940 | +17.8% 〜 +51.5% |
| 政府補助金収入 | 5,500 〜 8,000 | 5,566 | (1.2)% 〜 +43.7% |
| 営業利益 | (9,900) 〜 (9,000) | (9,975) | +75 〜 +975 |
| 税引前損益 | (10,600) 〜 (9,600) | (6,695) | (3,904) 〜 (2,904) |
| 当期損益 | (10,600) 〜 (9,600) | (6,697) | (3,902) 〜 (2,902) |

株主還元・資本政策
本資料に配当に関する記載はない。資本政策としては、継続受注案件獲得フェーズへの移行を見据えた中長期的な成長資金の確保を目的に、2026年5月19日公表のCB(転換社債)および新株発行により306億円を調達した。調達資金の使途は、生産設備の拡大に40億円、既存設備の維持及び拡充に30億円、寿命延長サービス衛星(LEXI-P)の製造に70億円、運転資金に160億円を予定する。戦略投資家としてヒューリック(出資額合計198億円、累計約220億円)とスカパーJSAT(同8億円)が参加した。株主構成は2025年4月期末から2026年4月期末にかけて海外機関投資家が9%から26%へ、個人投資家が20%から27%へ増加した一方、未上場時投資家は27%から8%へ低下し、資料はオーバーハング懸念はほぼ解消したとしている。なお、貸借対照表では現金及び現金同等物が10,021百万円(前期末21,300百万円)、資本が8,075百万円(同6,126百万円)、有利子負債が10,569百万円(同13,930百万円)となった。
| 調達手段 | 金額 | 希薄化率 |
|---|---|---|
| CB(海外一般募集) | 100億円 | 潜在希薄化率3.27% |
| CB(第三者割当) | 163億円 | 潜在希薄化率5.33% |
| 普通株式(第三者割当) | 43億円 | 希薄化率1.80% |
| 調達総額 | 306億円 | 10.4%(転換社債の転換も含む潜在希薄化率) |

中長期的な成長戦略・トピック
同社は、事業の黒字化には継続受注案件の獲得が不可欠との認識のもと、成長戦略策定、成長資金調達、体制強化、継続受注案件の獲得という4つの取り組みを進めている。防衛では宇宙監視衛星や燃料補給衛星、民間向けには寿命延長サービスの継続受注案件の獲得を目指し投資を強化する方針で、日本・英国子会社における生産設備の拡大を検討している。2026年4月にはグローバル経営体制の強化を公表し、組織を事業推進と管理・内部統制に分けて責任を明確化した。事業環境では、日本成長戦略会議の「17の戦略分野」に航空・宇宙と防衛産業が含まれ、燃料補給等軌道上サービスやRPO等の高度技術の獲得が官民投資ロードマップ素案に記載されている。
既存プロジェクトの進捗では、米宇宙軍の衛星への燃料補給実証ミッションであるAPS-Rが2027年4月期の打ち上げを見込むほか、ISSA-J1は2027-28年4月期、ELSA-MとLEXI-Pは2028年4月期の打ち上げを見込む。LEXI-Pはハード・ソフト両面の統合作業が本格化し、サービス契約交渉は正式な契約締結に向けた手続きが進捗している。その他の活動として、第8回定時株主総会(2026年7月30日開催予定)での承認を前提に、会計監査人をEY新日本有限責任監査法人から有限責任あずさ監査法人へ変更することを決議した。また2026年4月2日には高市総理大臣とフランスのマクロン大統領が同社を公式訪問し、2026年3月にはチャールズ3世がアストラ・カルタ紋章を搭載したELSA-Mを見学した。
※本記事はアストロスケールホールディングスが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。