※本記事はartienceが公開したIR資料(直近の通期決算説明資料)に基づく事実整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は開示資料に基づきますが、利益指標の定義や集計方法は会社により異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
artience(証券コード4634、旧社名:東洋インキSCホールディングス)の2025年12月期(2025年1月〜12月)連結業績は、売上高3,500億円(前期比▲0.3%)、営業利益208億円(同+1.7%)、経常利益209億円(同▲0.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益103億円(同▲44.2%)となった。
営業利益は期初から四半期毎に回復し、過去最高となった。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、米国・ケンタッキー州およびハンガリーのCNT分散体拠点等における減損損失72.7億円の計上と、トルコでの税法変更による税負担増加が主因となり、大幅な減益となった。
連結業績(2025年12月期 実績)
売上は、為替など好条件だった前年との比較で減収となったが、成長・収益基盤事業のグラビアインキ、缶用塗料、機能性コーティング剤などが堅調に推移。戦略的重点領域では塗工材、ディスプレイ用粘着剤が伸長した。営業利益は、国内のコストダウンと価格改定の継続、ナフサ価格の落ち着きにより増益基調となり、海外もディスプレイ向け光学粘着剤の好調や成長事業のインド・東南アジアでの拡販が寄与し、国内のリキッドインキ・顔料の寄与も加わりトータルで増益となった。
| 項目 | 2024年度実績 | 2025年度実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,511 | 3,500 | ▲0.3% |
| 営業利益 | 204 | 208 | +1.7% |
| 経常利益 | 210 | 209 | ▲0.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 185 | 103 | ▲44.2% |
| 営業利益率 | 5.8% | 5.9% | +0.1pt |
| 海外売上高比率 | 55.4% | 55.1% | ▲0.3pt |
| ROE | 7.3% | 3.9% | ▲3.4pt |
減損損失の計上
北米新政権発足後、特にEVの市況が芳しくなく、CNT分散体の出荷は低調な見込みとなった。欧州は出荷は堅調なものの、当初想定のキャパシティを埋めるまでには市場回復に時間を要するとして、以下の4拠点で減損損失合計72.7億円を計上した。
| 対象拠点 | 対象セグメント・事業 | 金額 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 米国・ケンタッキー州 | 色材・機能材(CNT分散体) | 49.5億円 | EV市場拡大の大幅減速による稼働計画の延期 |
| ハンガリー | 色材・機能材(CNT分散体) | 12.6億円 | EV市場拡大の大幅減速による稼働率の低下 |
| 中国・珠海 | ポリマー・塗加工(粘着剤) | 9.7億円 | VOC規制による溶剤型→水性型移行の市場進展遅延、営業損失継続 |
| 国内製造所 | – | 0.9億円 | 遊休資産の全額減額 |

セグメント別業績
色材・機能材は、LiB用CNT分散体やCF用材料が低調に推移し減収減益。ポリマー・塗加工は、中国のディスプレイ向け光学粘着剤や国内外の缶用塗料の伸長により増収増益。パッケージは、国内が堅調に加え東南アジア・インドが好調で増収増益。印刷・情報は、国内の情報系印刷市場の縮小により減収減益となったが、国内の油性3品種は黒字化した。
| セグメント | 指標 | 2024年度実績 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| 色材・機能材 | 売上高(億円) | 861 | 843 |
| 色材・機能材 | 営業利益(億円) | 34 | 23 |
| ポリマー・塗加工 | 売上高(億円) | 885 | 903 |
| ポリマー・塗加工 | 営業利益(億円) | 72 | 83 |
| パッケージ | 売上高(億円) | 915 | 925 |
| パッケージ | 営業利益(億円) | 54 | 55 |
| 印刷・情報 | 売上高(億円) | 833 | 810 |
| 印刷・情報 | 営業利益(億円) | 49 | 45 |
| 連結 | 売上高(億円) | 3,511 | 3,500 |
| 連結 | 営業利益(億円) | 204 | 208 |

通期業績予想(2026年12月期)
2026年12月期は、インドでの粘着剤増設工事完了や東南アジア・周辺地域でのパッケージ関連材料の拡販を見込み、増収増益を計画する。営業利益は前期比10.8%増の230億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期の減損影響の反動もあり同103.1%増の210億円を見込む。ROEは8.0%への回復を目指すとしている。
| 項目 | 2025年度実績 | 2026年度計画 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,500 | 3,600 | +2.9% |
| 営業利益 | 208 | 230 | +10.8% |
| 経常利益 | 209 | 225 | +7.7% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 103 | 210 | +103.1% |
| 営業利益率 | 5.9% | 6.4% | +0.5pt |
| ROE | 3.9% | 8.0% | +4.1pt |

中期経営計画「artience2027」の進捗
中期経営計画artience2027では、2026年12月期の当初計画(売上高4,000億円・営業利益250億円)を、売上高3,600億円・営業利益230億円に見直した。2025年は、高収益既存事業群では収益力の強化が着実に進展した一方、戦略的重点事業群(モビリティ・バッテリー関連、ディスプレイ・先端エレクトロニクス関連)は外部環境の影響により立ち上がりに時間を要した。こうした状況を踏まえ、2026年は中期経営計画の営業利益目標には至らないものの、前年同期比11%の増益を見込む。2029年12月期には売上高5,000億円、ROE10.0%以上を目指すとしている。
株主還元
中期経営計画artience2027の株主還元方針として、安定配当を基本としつつ、利益達成時のキャッシュの余剰を戦略投資および自己株式取得などの株主還元増へ充当するとし、「総還元性向50%以上」を掲げる。2025年12月期の年間配当は中間50円・期末50円の合計100円。2026年12月期は、利益成長を背景に前期比20円増配となる年間配当120円を計画している。自己株式取得は、2025年5月12日〜2026年5月11日を取得期間として、450万株もしくは100億円を上限に実施している。

財政状態
2025年12月末の有利子負債は839億円(前期末667億円)、自己資本比率は55.4%(前期末57.5%)、D/Eレシオは0.39倍(前期末0.32倍)。資産合計は4,626億円(前期末比▲2.2%)、純資産合計は2,772億円(同+1.3%)となった。
トピックス
2026年2月、インド理科大学院(IISc)内に国外初の研究拠点「aTIC-India」を開設した。世界最大級の消費地・生産地であるインドで、インフラ、通信、ヘルスケア、エネルギー、先端エレクトロニクス向けに持続可能で高性能な次世代素材を開発する分子レベルの研究を行う。このほか、artienceのIRサイトが3つの主要評価機関で高評価を獲得したほか、Jリーグの対戦カードに合わせてユニフォームの組み合わせを選択できる配色ツールが試験導入された。
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